医師国家試験の合格率は例年90%前後で推移しており、2025年(第119回)は92.3%という高い数字を記録しました。一見すると「合格しやすい試験」に見えるかもしれませんが、この数字だけで試験の難易度を判断するのは危険です。新卒者の合格率が95.0%である一方、既卒者は59.0%と大きな差があり、実際には厳しい選抜が行われています。
本記事では、合格率が高い理由の背景にある構造的な要因から、不合格者に共通する特徴、そして合格率を確実に上げるための勉強法まで、医学生が知っておくべき情報を詳しく解説します。
医師国家試験の合格率が高いと言われる理由
医師国家試験の合格率が90%を超える水準で安定している背景には、複数の構造的な要因があります。単に「合格しやすい試験だから」という理由ではなく、受験者が試験会場に辿り着くまでの過程そのものがフィルターとして機能しているのです。
受験資格が厳しく途中でふるいにかかる
医師国家試験を受験するためには、医学部6年間の課程を修了する必要があります。そもそも医学部入試は国内で最も難易度が高い入試の一つであり、入学段階で高い学力を持つ学生が選抜されています。
さらに医学部では進級判定が厳格に行われ、各学年で一定数の学生が留年します。臨床実習に進むための共用試験(CBT・OSCE)をクリアし、卒業試験に合格した学生だけが国家試験の受験資格を得られるのです。
つまり、国家試験会場に辿り着いた時点で、すでに複数回の選抜を通過した集団が受験しているということです。この構造が、見かけ上の高い合格率を生み出している大きな要因となっています。
出題範囲と試験形式がある程度決まっている
医師国家試験は400問という膨大な問題数ですが、出題範囲や形式には一定のパターンがあります。厚生労働省が公開している出題基準(ガイドライン)に沿って作成されるため、対策の方向性が明確です。
試験は必修問題、一般問題、臨床実地問題で構成され、それぞれに配点や合格基準が設けられています。必修問題は80%以上の正答率が求められる一方、一般・臨床問題は相対基準で合否が決まります。
| 問題区分 | 問題数 | 合格基準 |
|---|---|---|
| 必修問題 | 50問 | 80%以上(絶対基準) |
| 一般問題 | 200問 | 相対基準 |
| 臨床実地問題 | 150問 | 相対基準 |
この出題形式が長年変わらないため、対策ノウハウが蓄積されやすく、多くの受験生が効率的に準備を進められる環境が整っています。
多くの受験生が同じ対策ルートを通る
医師国家試験対策では、大手予備校の映像講義や問題集を活用する学習スタイルが一般的です。多くの医学生が5年生後半から6年生にかけて同様の教材で学習を進めるため、対策の質に大きな差が生まれにくい状況があります。
医学部のカリキュラム自体も国家試験の出題範囲と連動しており、6年間の学習を着実に積み重ねた学生であれば、特別な対策をしなくても一定の得点が見込めます。このような環境が、新卒者の高い合格率を支えているのです。
以下の要因も含め、医師国家試験対策は多くの受験生が似た学習ルートをたどりやすい構造になっています。
- 大手予備校の講座受講が一般的
- 過去問を中心とした学習スタイルの定着
- 医学部カリキュラムと出題範囲の連動
- 先輩からの情報共有や学習資料の継承
医師国家試験の合格率だけを見てはいけない理由
全体の合格率92.3%という数字は、あくまで「受験者全体」の結果です。しかし新卒と既卒、大学別など、条件を細かく見ていくと、異なる実態が浮かび上がってきます。高い合格率に安心してしまうことが、思わぬ落とし穴になることもあるのです。
不合格になる人には共通点がある
以下は、2025年(第119回)医師国家試験における新卒者・既卒者別の合格状況を示したものです。
| 区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 新卒者 | 9,507人 | 9,029人 | 95.0% |
| 既卒者 | 775人 | 457人 | 59.0% |
| 全体 | 10,282人 | 9,486人 | 92.3% |
受験者10,282人のうち796人が不合格となりました。全体の合格率は9割を超えていますが、内訳を見ると新卒者と既卒者で大きな差があることが分かります。新卒者の合格率が95.0%であるのに対し、既卒者は59.0%にとどまっており、同じ国家試験であっても立場によって難易度が大きく異なることが示されています。
既卒者の合格率が低い理由としては、学習環境の変化が挙げられます。医学部卒業後に臨床研修を行いながら再受験する場合、まとまった学習時間を確保することが難しくなります。また、一度不合格を経験すると精神的なプレッシャーも大きくなります。新卒で不合格になった場合、翌年以降の合格がより困難になるという現実を認識しておく必要があります。
合格率の高さが油断につながりやすい
「合格率90%以上なら大丈夫だろう」という認識が、対策の遅れや学習量の不足を招くことがあります。新卒者の不合格者約480人は、何らかの理由で十分な準備ができなかった、または対策の方向性を誤った学生たちです。
大学別に合格率を見ると、大学間で一定の差が存在することが分かります。合格率が極めて高い大学がある一方で、平均を下回る大学も存在しており、結果にはばらつきが見られます。
この差は学生個人の能力差だけでなく、大学の国試対策プログラムや学習環境の違いを反映しています。自分の所属する大学の合格率や学習支援体制を把握した上で、必要に応じて個人での対策を強化することが重要です。
直前期の勉強量と質で差がつく
医師国家試験は例年2月に実施されます。6年生の後半、特に12月から試験直前までの約2か月間は、合否を分ける重要な時期です。この期間の過ごし方で、合格圏内にいた学生が不合格になることもあれば、ボーダーライン付近から一気に合格圏に到達することもあります。
直前期に成績が伸び悩む受験生には、いくつかの特徴があります。
- 過去問の周回に時間を取られ、弱点補強が後回しになっている
- 模試の復習が不十分で同じ間違いを繰り返している
- 新しい問題への対応力が不足している
- 必修問題の対策を軽視している
必修問題は80%以上の絶対基準があるため、1問の重みが非常に大きくなります。一般・臨床問題で高得点を取っても、必修で基準を下回れば不合格となることを忘れてはいけません。
医師国家試験の合格率を上げる勉強法の考え方
合格率を確実に高めるためには、従来の学習法の限界を理解し、効果的なアプローチを取り入れることが重要です。ここでは、多くの受験生が陥りやすい課題と、それを克服するための勉強法について解説します。
過去問暗記だけでは本番の対応力が不足する
医師国家試験対策の王道は過去問演習です。過去10年分程度の問題を繰り返し解くことで、出題傾向や頻出テーマを把握できます。しかし、過去問の「答えを覚える」だけの学習では、本番で問われる応用的な判断に対応できない場合があります。
近年の医師国家試験では、単純な知識を問う問題よりも、臨床推論や複数の知識を組み合わせて解く問題が増加傾向にあります。過去問と全く同じ問題が出ることはほとんどなく、設定や選択肢を変えた類題、あるいは過去に出題されていない新傾向の問題が一定数含まれます。過去問を解く際は「なぜこの選択肢が正解なのか」「なぜ他の選択肢は不正解なのか」を説明できるレベルまで理解を深めることが重要です。
初見問題への対応力を鍛える必要がある
試験本番では、見たことのない問題や設定に遭遇することが避けられません。このとき、過去問の暗記に頼った学習をしていると、パニックに陥ったり、無駄に時間を使ったりしてしまいます。
初見問題への対応力を高めるには、以下のような学習が効果的です。
- 病態生理の理解を深め、症状から疾患を推論できるようにする
- 過去問の正解以外の選択肢についても詳しく学習する
- 模擬試験を積極的に活用し、初見問題を解く経験を積む
- AI予想問題など、過去問以外の問題にも触れる機会を作る
特に臨床実地問題では、提示された症例情報から必要な情報を抽出し、鑑別診断を行い、適切な検査や治療を選択する思考プロセスが求められます。この思考プロセスを日頃から意識的に訓練することで、初見問題にも冷静に対応できるようになります。
弱点を早く見つけて潰すことが重要
限られた時間で効率的に学習を進めるには、自分の弱点を把握し、優先的に対策することが不可欠です。模擬試験や問題演習の結果を分析し、正答率の低い分野や苦手な問題形式を特定しましょう。
弱点分析のポイントとしては、以下の観点があります。
- 分野別の正答率を確認し、全国平均と比較する
- 間違えた問題の傾向を分析する
- ケアレスミスなのか、知識不足なのかを区別する
- 復習の優先順位をつけて計画的に取り組む
弱点を放置したまま直前期を迎えると、挽回が困難になります。5年生のうちから定期的に自己分析を行い、苦手分野を一つずつ克服していく姿勢が合格への近道です。
また、学習履歴を記録し、自分の成長を可視化することもモチベーション維持に有効です。どの分野にどれだけ時間をかけたか、正答率がどう変化したかを追跡することで、学習計画の修正も行いやすくなります。
まとめ
医師国家試験の合格率が高い背景には、医学部入試から卒業までの厳格な選抜プロセスがあります。新卒者の95.0%が合格する一方、既卒者は59.0%と大きな差があり、一発合格の重要性がわかります。合格率の高さに油断せず、過去問暗記に偏らない学習、初見問題への対応力強化、弱点の早期発見と克服を意識した対策が必要です。自分の現在地を正確に把握し、計画的に学習を進めることで、確実に合格を勝ち取りましょう。
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